情報教育推進アドバイザーとしての経験と考察

これは私が情報教育推進アドバイザーとして2000年1月から3月までB市の小中学校を訪れ
た記録と考察である.

情報教育推進アドバイザーは小学校11回,中学校は10回訪問して

1.教職員に対するパソコン研修.
2.パソコンを使った授業の補助.
3.学校のパソコンシステムのメンテナンス

を行うのが主な仕事である.私はこれらに加えてパソコンやインターネットの活用例として私とアメリカのバージニアの小学校四年生とのやり取り校内ホームページ子どもの成長を(子どもが)グラフ化する試みなどを紹介した.

実際は一度に数人が訪れ数度の研修と言うケースが多いが,ここで紹介するのは私が毎週訪れ授業に参加した上で教職員の研修も行いもっとも充実した仕事が出来たと考えられるある学校での研修日誌である.
校内ホームページや子どもの成長を(子どもが)グラフ化する試みが得られたのはこの学校である.である.それではその研修日誌を

また私のこの仕事の特長としてインターネットを使ってある国会議員や文部省の方そしてバージニアの小学校の先生も巻き込んで仕事を進めていった事である.
その事の一端はこの業務報告にある.この事自体はインターネットが無ければ
考えられないことだが,この業務報告でも引用しているように

> 。現場の先生方がど
> んな問題(例えば、学級崩壊、不登校、落ちこぼれなど)
> をかかえており、様々な「道具」がそれにどのように対応
> できるかーーーという視点が、関係者(文部省の人々も含
> みますが)の間で不足している(コンピュータが入ると、
> 何か画期的なすばらしいことに使わなければならない、と
> 思ってしまう人が多い)ことが問題だと、個人的には思っ
> ております。

という文部省の方の意見がこの仕事を進めていく上で私の指針というか問題意識になりました.
良い教育というのはパソコンやインターネットが出現する前からあったのだ.

仕事や現場の問題点など

まず仕事は1月から始まったということもあり年度末で先生は忙しくてパソコン研修どころではないと言う問題がある.そのような事情もあって始めに書いたように数人が訪れて数日(極端な場合五人で二日)と言うような短期間の研修が多く内容が断片的になる傾向がある.私の経験から言うと先生達と色々と話し込むとこれも教えたいと思うことがあり,また先生からも「もっと来て欲しい」と言われることが再三だった.残念な事である.

次にこれはある程度は仕方がない事かも知れないが,パソコンをはじめとする機器の操作があまりにも複雑である.例えばある学校ではパソコン室にビデオが設置されているのだが,それを使って絵を出すまでに数十分,さらに音を出すまでに数十分かかった.(だれも方法を知らなかった)本当に複雑怪奇なシステムになっている.もっと単純なシステムを導入するべきだろう.

この事と関連するが,最初に仕事をスムーズに進めようと学校に割り当てられている電子メールアドレスを電話で尋ねるとそれだけで大騒ぎ.そして数十分かかった上で教えてくれたアドレスは間違っていた(笑).情報化というが学校現場の現状はこんなものだろう.これは批判しているのではなく学校の仕事は良い学校教育を行うことでありパソコンやインターネットを使うことではないのである.とは言うもののパソコンやインターネットをフルに使った教育に挑戦する学校があっても良いと思うのだが.

業務報告でも何回も書いているがインターネット(ホームページ閲覧)が大変に遅い.これではインターネットを使った授業は困難である.

パソコンやインターネット活用は学校によって大きな開きがある.パソコン好きの先生がいる学校では盛んであるが,そうでない学校のパソコン室は開かずの部屋になっている.何度も書くようだが,学校の仕事はパソコンを使うことではないので学校によってパソコン活用に大きな開きがあるのは学校の特色と考えてよいものかどうか考えている.

問題に対する対策

今回の情報教育推進アドバイザーという仕事は国の緊急雇用対策の一環として行われたのだが,学校においてこういう職種は今後必要になるのではないか.
一校に一人は無理として数校を兼務すればと思う.そして平常の教育活動にキチンと組み入れられた系統的な仕事を行う事が必要である.
さらに学校のインターネット回線の増強や簡単なシステムの導入が必要である.


小中学校における情報教育の意義

何故情報教育なんて騒いでいるのだろうか.情報教育をパソコンの操作とすると大学や専門学校でパソコンを教えた経験から言うとパソコンの操作なんて週数時間の授業で数ヶ月もすれば一通り使えるようになるものだ.その上にパソコンなんて数年すれば大きく変わる.このような理由から小中学校でパソコンの操作など無理して教える必要など無いと言える.教育内容の精選集約は大事なことだ.

このような背景を考慮した上で私なりの情報教育の目標をあげておくと発信型の教育あるいは参加型の教育の実現と言うことになる.情報化教育アドバイザーの仕事の目標はここにあるのであって単にパソコンの操作を教える事ではない.


その他に思ったこと

子どもとともに:ある小学校の先生に教えてもらった言葉である.忘れる事ができない.

教員研修について.ある教員研修会での発表をお手伝いして気づいた事だが,本当に素晴らしい実践が多い.それだけに気になったのは失敗例や現在うまくいかないで困っている事例の発表がない事だ.「私は現在こう言うことで困っている.何か良い知恵はないだろうか」なんて問いかけがあり,それに対して「私は以前こう言ったことを体験した」なんて発言が出れば有意義だと思う.お手伝いしていたベテランの先生にそんな発表はないのですか?と尋ねると「そんな発表はない.あっても良いと思うのだが…」といった答えだった.

コスト意識.これも教員研修会で感じた事だが,先生達はともかく発表が無事終わることを考えていたみたいだった.つまりその発表がどれだけ役に立つかなどという効果は意識に無いようだった.その教員研修会はある学校に3時半頃から教師百名以上が集まって五時くらいまで行うのだが,この研修に費やされる教師の給料分だけでもかなりの金額になるはずだが,そのコストを考えている教師はほとんどいないのではないか.教育に短絡的にコストを持ち出すのは間違いだと言う意見には同意するが教師がコストを無視して良い理由にはならないだろう.

かきくけこからあいうえおへ:色々な学校を訪れて分かった事は学校によって雰囲気が大きく異なるという事です.明るく前向きの学校もあれば暗く冷たくエラソーにしているだけの学校もあります.これに関して教員の研修集会である指導主事の先生がこのようなことを言っていました.

かきくけこの実践から あいうえおの実践へ
つまり

かたい
きつい
くらい
   けんい主義
こわい

実践から

あかるい
  いのちある
うれしい
 えがおの
 おもしろい

実践へということです.

学校でパソコンを活用することにより学校が”あいうえお”になるかどうか私は疑問に思っています.つまり”かきくけこ”学校はパソコンでは直らないと思っているのです.しかし”あいうえお”学校ならパソコンはずいぶんと活躍するのではないかと思っています.


資料

1.学校訪問時に渡すメモ.
2.学校訪問時に渡すメモ22000-0717
3..パソコンやインターネット活用に関する参考文献.
単なるソフトの解説法ではなくパソコンやインターネットとどう付き合っていくのかについて原理的な考察がある本を選んでみました.
4.ある中学校で行った教職員に対するインターネット研修のレジメ.
5.子ども達(小学生)の作品.2000-06-15