毒書ノート2


1.100億稼ぐ超メール術.堀江貴文著.東洋経済新報社.2005-02-19

まずこれは一日数千通の電子メール(以下メール)を扱って仕事をしている企業のトップの人のノウハウである.これ以外の人に は当てはまらない事がある.なぜこんな事を書くかと言うとオツムの単純な人がノウハウ本を読むと前提や条件抜きでマネをして失敗する事が多いからだ.

それはともかく堀江氏が紹介するメールの活用例は

○1000人の部下を管理し親密な関係を保てる日報メール.

○無駄な会議を消滅させ活発な議論を生み出す会議メール.

○メールを徹底的にデーターベース化した情報管理術.

これらの活用例について説明しているが,メールよりむしろ掲示板が適当ではないかと思う例もある.しかしある程度普遍的で役に立つメールのノウハウがある と思う.それを書いてみよう.

*は私の意見や説明.

メールでケンカしてる人は相手に実際に会わせろ.
*メールでのやり取りは文字だけだから行き違いが生じやすい.だから実際に会わせる事が必要である.

長文はダメ.具体的に書け.箇条書き.

敬称は省略するなどフランクに書く.

簡単な返事は早く書いて出しておく.時間がかかるメールはとりあえず 「読んだよ」のメールを出しておく.
*これとは別にメールの返事は書いてから少し間を置いて送信する事を勧める.あわてて送信して「しまった!」と思うことが多いからである.

業務日誌は多くの人に同報.読んでもらえる楽しさがある.
*誰でも読者を持てることがインターネットの良さである.それだからゴミも多いのだが.

メールで仕事を進めるとき相手がどれくらいの頻度でメールを使ってる か確認する.
*簡単な用件でも返事が来ない場合不信感が募る.それは相手がメールを使う頻度よりもむしろ相手がメールを使って物事を進める習慣がついていない事が原因 である場合が多い.そ のことを含めて確認すべきである.

メールの漏洩に注意.メールというのはどこかで傍受されていると考え たほうが良い.
*大抵の仕事には守秘義務がある.私のように教育関係の仕事をしていればなおさらである.個人情報をメールで扱って良いのか.良いとすればどのような注意 が必要か.明確にしなければならないことが多い.

以下は技術的なこと.

迷惑メールはその対策ソフトを使う.
*迷惑メールに対しては無料メールソフトのThunder Birdが優れている.
http://www.mozilla-japan.org/products/thunderbird/

フィルタリング(メール振り分け)機能を活用する.
*私はBecky!というメールソフトを使ってiいる.このソフトのフィルタ機能で上の迷惑メールをゴミ箱に入れている.もちろんフィルタ機能はそれだけ に使 うものではなく便利なものだ.

ショートカットを活用.
*ショートカットとは例えばコピーはCTRL+Cなどでマウスを使わない方法.
マウスはキーボードから手を離さなければならないので非能率的である.今お使いのメールソフトで送受,返信などの基本的なショートカットを調べてみれば良 い.

2005-2-24.追記.著者は一日5000通のメールを処理していると書いているが,誇大広告である事を示そう.5000通のメールの内約半分が迷惑 対策ソフトなどで処理できるとしても残りの数千通のメールを処理しなければならない.

メール1通あたり1分で処理できるとしょう.(処理すると言うのはメールを読み必要なメールには返事を書くと言うこと)それでも1時間で処理できるメール は60通だ.このペースで休まずに10時間作業を続けたとしても600通程度のメールしか処理できない.数千通なんて到底不可能だ.

2.二十歳のころ.立花隆著.新潮社.2005-02-19
立花が東大教養学部で開講していた「調べて書く」ゼミの共同作品である.
オンライン版もある.http://www.sakamura-lab.org/tachibana/hatachi/index.html
学生が色々な人に二十歳の頃をインタビューしたものである.

序文で立花はこのテーマは実に良い選択だったと書いている.何故なら二十歳の頃は多くの学生と同年代だしこの頃は人生がある不定形の可能性のかたまりから ある形をなしていく過程の時期だからである.

と言っても作業はスムーズに行かなかったようだ.立花がインタビュー相手には失礼がないようにと念を押したにもかかわらず社会経験の乏しい学生は失礼な事 をしでかしたり,書く文章もハチャメチャなのが多かったようだ.
それだからこそ作業を進めて行く過程で学生は成長していったのだろう.

3.ぼくはこんな本を読んできた.立花隆著文芸春秋2005-02-19
立花流の読書論,読書術,読書生活論である.

初めのほうの”わが要塞”や”書庫新築”で面白いのは執筆当時50代後半の立花は本を収納するため地下一階,地上三階のビルを建てていた.しかし,30代 半ばまではせいぜい2DK程度の部屋に60個位の木製のリンゴ箱に本を入れて並べてた.

彼が言うのは本を読むには半畳程度の空間があればよくそこから500冊位の本に手を伸ばせすことが出来る.少し動けばさらに1500冊位の書物にアプロー チする事ができる.これでたいていの仕事は出来る.

私が面白いと思うのは彼が'70年代に田中角栄研究などすばらしい仕事をしたのはこのようにリンゴ箱を積み上げた貧弱な環境で仕事をしていた時で,一方ビ ルを建てた'90年代以降の立花の仕事は粗雑ぶりが目立ち批判を浴びている事である.

他に”体験的独学論”とか”実践に役立つ十四カ条読書法が”ある.彼の方法論だから誰にでも無条件で役に立つとは限らないが参考になるかもね.

この場合に限らず本を読むとき大事なのは「私はこの意見に反対である」という姿勢を忘れてはいけない.事実立花もゴミ本,カス本が沢山あると言っている. もっとも何が ゴミ本,カス本かは自分で読んで判断するしかないだろう.

次に書く内村鑑三の本など古典というか化石化した本だと思っていたら立花が古典について面白いことを書いていたので紹介しよう.
出版は一過性のものP43-

立花は古典をヨーロッパでは中世くらいまで日本では平安朝文学までと定義してトルストイなどの19世紀の文学はまだ古典たりうるか検証が足りないとしてい る.
この立花の定義では後の内村も古典たりうるのか検証が足りない事になる.化石にもなっていない訳だ.(笑)

立花は人類の知的営みの中で進化の袋小路に入ってその後発展の無い19世紀の思弁哲学のようなものがあると言ってる.さらに本当に古典と言われている書物 にも下 らないものがあるとも言ってる.

これは私の意見だがやはり下らないかどうかは各自の判断に任せるしかないのではないか.いくらデタラメな本でも役に立つ事があるだろう.

4.後世に残す最大遺物,デンマルク国の話.内村鑑三 著.岩波文庫.2005-02-19
これはある読書会で読んだもの.本が手元にないので正確な引用が出来ないが,思った事は以下のような事である.

まず一般論だが,他の国や文化を紹介する時,礼賛するか批判するかのステレオタイプな内容が多い.何故か分からないが,私は面白い現象だと思っている.
内村の場合は礼賛タイプだが,これは当時脱亜入欧(遅れたアジアを脱して進んだ欧州に入ろう)の雰囲気が強かったのでその影響があったのかもね.
遺物の本でも源氏物語だか何だかはナンジャクでダメだなんて書いていたのは同じ理由ではないか.

内村のデンマークの本に書かれているような国民の富などに関して本当かどうかを検証した研究はなされたのだろうか.
(当たり前の事だが,実証的研究は大事である.)

デンマークの本の要点は国民の心構えが大事だと言うことと植林の大事さだろう.

戦時中の日本の「贅沢は敵だ!」等のように政府は自分に都合の良いように国民に心構えを説く.これも一般論だが国民の心構えなんて話はアブナイ方向に行く 場合が多いので要注意だ.

植林の大事さは生態学の観点から言っても当然で,生態系は微生物などの分解者と植物の生産者と動物の消費者で成り立っている.生産者である植物が無ければ ほとんどの生物は生存できない.

植林はそれ以外にも治水,治山の役割がある.山は木が無ければ少し雨降っただけで土石流だ.

内村の本は書かれている内容が古く文も古臭く現代人には読みにい.
化石化していると思う.

内村の本に関して批判的な事を書いたが,どんな本も読み方,受け取り方によって得られるものがある.読み方によればヒットラーのわが闘争からも得られる事 が多いだろう.そう言う意味ではカス本は無いと言える.

ちなみに私は本を多く読めば人間は賢くあるいは幸せになれるかと言うと必ずしもそうでも無いと思ってる.
読書なんて趣味だから各自が好きなようにやれば良いと思う.


読 書,作文指導に関して私が思うこと

子供を読書や作文嫌いにさせる簡単な方法がある.
それは読みたくない本を読ませること.書きたくない文を書かせること.

国語の大先生である大村はまさんは作文教育に当たって

遠足に行ったからといって作文を書かせないで下さい.

と言っておられた.さすが大先生である.
大村はま先生については毒書ノート1にあります.